疑われる本能

昔っからだけど、桃は犬としての自覚が足りないとか、自分のことを犬とは思ってないようだとか、色んなことを言われてるの。隣の犬が怖くてお散歩の帰りに座り込みで抗議してみたり、人のスカートの後ろに隠れてそっと覗いたりするから、それがおかしいって言われるの。あとね、嬉しくなると階段踏み外しちゃったり、郵便配達が来ても熟睡してて吠えなかったり、数え上げたらキリがないんですって。一応ね、リス、兎、猫なんかを見かけた時には、犬としての威信にかけて追いかけてみるのよ。でもね、桃ってドン臭いらしくて、追いついた験しがないの。

実は、家の裏庭の隅に芝刈り機なんかを入れてる小屋があるんだけど、その下に野兎が巣を作ってるの。毎年春になると、ビックリするくらい小さな子供達がちょろちょろ出てくるのよ。で、このところ晴れてて暖かい日もあるもんだから、親兎がよく外に出てるみたいなの。昨日はね、外で桃が遊んでたら、どこかから帰って来た兎が居てね、桃は早速大急ぎで追いかけたのよ。ほら、だってマミーに見られてるから、追いかけておかないとカッコ悪いじゃない?何回か追いかけたんだけど、捕まらないしつまんないから、見えなくなったところで、草むしりすることにしたの。そしたら草むしりに夢中になっちゃって、桃の鼻先1メートルのところにいる兎に、全く気が付かなかったのよ。それをマミーに見つかっちゃってさ、また桃は笑われちゃいました。ガックシ。